聞き手の及川が、アメリカは宗教国家であるという側面を取り上げて、宗教右派のカトリックが強力で、同性愛や中絶を認めないが、という問いかけに対して、外岡秀俊も、それはその通りで、「結婚は聖なるもの」という考え方を崩していない、同性愛や性的マイノリティへの嫌悪感は非常に強い、と応える。
その話の流れで、外岡はこういうことを言っている。
「アメリカの宗教は、キリスト教ではないんですよ。大統領が就任式で聖書に手を置いて宣誓しますね。聖書は旧約がユダヤ教で新訳がキリスト教。また『ゴッド・ブレス・アメリカ』という歌にあるゴッド=神とは、イエス=キリストではない。キリスト教とユダヤ教を包括するものとして聖書があるんです。アメリカ人が神を信じているというとき、聖書を信じているのであって、キリスト教ではない。」
へー、そうなのか。ここは面白いところだ。そして、もっと突っ込んで知りたい。
先日死去したローマ教皇フランシスコが、同性愛を認め、女性司祭を認めても、アメリカのカトリックは頑として受け入れないわけだ。
そうして外岡の結論は、たとえば北丸雄二のそれと重なる。
「『やっぱりアメリカってすごいな』と思いますね。どんな時でも声を上げる人たちがいる。徹底して戦う。うやむやにしておく日本社会とは違います。エンターテインメントの世界の人たちも、人権とか平等に価値観を置いていて、社会活動をするのが当然のように受け止められている。」
仕事をしていて、楽しい時期が3つあるといった、外岡の言葉を思い出してほしい。
またNYにいて国連の仕事もしている。
「目の前で劇的な瞬間がいくつかありました。ソ連のシェワルナゼ外相が国連でいきなり、ソ連の崩壊を明言して驚きましたね。〔中略〕報道陣がみんな囲みましたよ。シェワルナゼが『ソ連はいくつかの共和国に独立します』と言った。『いつ?』『今日からだ』。みんな予想していなかった。」
歴史が動く瞬間というのは、立ち会っていて、どんな気持ちになるんだろう。
「カンボジア問題でもシアヌークが国連で和平を宣言した。あれも劇的でしたね。目の前で世の中を動かす最大級の世界ニュースが起こる。すごい時期にいさせてもらった、という実感はあります。」
それはそういうしかあるまい。
国連については、こういうことも言っている。
「結論から言えば、私は日本の常任理事国入りは何らかの形で実現すべきだと思っています。というのは、それが最大の安全保障になるからです。攻撃を受けることがなくなる、国益になる。」
なるほど朝日の記者は、そういうふうに考えるのか。
米国に100パーセント追随する国である限り、日本は常任理事国に入らない方がよい、と僕は思う。もしアメリカが戦争をすると言えば、常任理事国に入った日本は、もろ手を挙げて賛成せざるを得ないだろう。
「それが最大の安全保障になる」どころか、もっとも危険な位置に日本を置くことになる。僕はそう思う。
しかしそもそも「国益になる」というような言葉遣いは、僕には到底できない。そんな位置に自分を置いてみたことはない。
それ以上に「国益」という言葉遣いが、自分さえよければというニュアンスを含んでいて、どうにも堪らない。
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