AIの描く世界――『ChatGPTの先に待っている世界』(川村秀憲)(1)

『学士会報』をぱらぱらめくっていると、川村秀憲という人が、ChatGPTについて書いているのが目についた。

『学士会報』は老人の読む雑誌だから、ChatGPTについても、非常に分かりやすく書いている。
 
読んでみると、なかなか面白い。そして終わりに、ChatGPTについては、現状で分かっていることを本に書いた、この本は大半を、ChatGPTの助けを借りて描いたので、原稿を完成させるのに20時間ほどで済んだという(ほんとかね?!)。

『学士会報』の論文要旨というかエッセイが、あまりに明晰だったので、この20時間で書き上げた本を、思わずアマゾンで注文した。私のような肢体不自由者は、巷の書店には申し訳ないが、ほとんどアマゾン命である。
 
著者略歴を見ると川村秀憲先生は、北海道大学の情報科学科の教授である。

「2017年9月より『AI一茶くん』の開発をスタートさせる。ニューラルネットワーク、ディープラーニング、機械学習、ロボティクスなどの研究を続けながらベンチャー企業との連携も積極的に進めている。」
 
中身については全然わからないけど、最先端の研究をしているらしい。
 
先生は言う。

「人工知能の進化は止まることを知らず、二〇二二年に登場したChatGPTのような生成系人工知能は、ある意味でティッピングポイント(転換点、臨界点、閾値)を超えたのではないかと感じます。」
 
ChatGPTは人間を相手にして、英語でも日本語でも普通に会話を交わす。できる限り人間の疑問に、答えようとする。

「今後、ChatGPTに代表される生成系人工知能に大量のデータを与えたらどうなるのか。その賢さには限界はあるのか、どこまで進化するのか。それは人工知能研究者でさえも、現時点では予測不可能です。つまり人工知能の能力はいま、徐々に人の手を離れつつあるということです。」
 
私はここからすぐに、ターミネーターの来襲を思い浮かべた。たぶんすべての人が、それを思い浮かべるのではないか。
 
著者もこう言っている。

「現在、ChatGPTを含めた人工知能の性能はさらに劇的に向上していて、見方によっては恐怖すら覚えるほどです。」
 
これはよくある発明ではない。それがどれほどの意味を持つのか、そこから考えなくてはならない。

「人工知能の発展によって、人間の価値観や尊厳は変わるのか変わらないのか。学ぶという行為は意味のないものになるのか、そうではないのか。この先、シンギュラリティ(技術的特異点、人工知能が人間の知能と並ぶ時点)が来るのか来ないのか、人類が滅ぼされるような脅威はあるのかないのか。」
 
ここまでが、「まえがき」である。
 
ここまで読んで、私は当然考える。人工知能の開発者は、軍事に特化して、凄まじいスピードで、敵を撲滅することに躍起になるだろう。たぶん今、世界の先進国はみなヨーイドンで、その競争に参加しているはずだ。ちょうど第2次大戦末期に、アメリカとドイツで、原子爆弾の開発競争をやっていたのと同じだ。
 
とりあえずはそんなことを思いながら、本文を読み進めていこう。

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