憂国の士となって財務省に挑む――『ザイム真理教』(森永卓郎)(2)

そういうわけで、『ザイム真理教』を終わりまで読んでみたが、結局、消費税が徐々に税率を上げているのが元凶だ、という以外には無いようだ。
 
消費税が諸悪の根源、という言い方には、一定の説得力があるように思う。

「消費税率を5%に引き上げるまで、日本の実質賃金は上昇していた。ところが、消費税率を5パーセントに上げた途端に実質賃金の下落が始まった。日本経済がデフレに転落したからだ。」
 
森永さんは、デフレに転落したわけを、誰でもわかるように絵解きする。

「消費税率を上げると、その分だけ実質所得が減少する。そうなると消費関連の企業の売上げが落ちるから、リストラをしたり、賃金の低い非正社員に置き換えたりして、人件費を削る。そうすると、また所得が落ちて、消費が減少するという悪循環におちいるのだ。」
 
これは2014年に消費税率を8%に引き上げたときも、2019年に10%に引き上げたときも、起こったことだ。
 
しかし森永さんの、この見解を報道することは、テレビや新聞ではタブーになっているという。
 
ほんとかね、と私は思う。こういうのはむしろ、ガス抜きの意味も含めて、盛大に議論した方がよくはないか。
 
そして仮にそうであるとするなら、消費税を引き上げる前提として、非正規社員の給与を、正規の5割にせずに、ヨーロッパなどと同じく8割くらいにしておけば、それでデフレ・スパイラルは避けられたのではないかと思う。
 
もっともこれは、経済ではなく、政治の領分の話だろう。
 
森永さんは、また別のところで、違う言い方もしている。

「日本経済が成長できなくなった最大の理由は『急激な増税と社会保険料アップで手取り収入が減ってしまったから』だ。」
 
その結果、また同じようなことになる。

「使えるお金が減れば、消費が落ちる。消費が落ちれば、企業の売上げが減る。そのため企業は人件費を削減せざるを得なくなる。……という悪循環が続いたのだ。」
 
そうして著者は鉄槌を下す。

「ザイム真理教は、国民生活どころか、日本経済まで破壊してしまったのだ。」
 
これはその通りという気がする。とはいうものの、急速な高齢化社会社に向かっては、会保険料は上げざるを得ないだろう。「急激な増税」は、何を指すのか分からないから、判断は保留する。
 
日本人の少子化についても、言及されている。2022年には出生数は、初めて80万を切って79万人となり、これは前年よりも4万3000人少ない。
 
今週のニュースによれば、2023年には75万人で、ますます加速度的に出生数は少なくなっている。

これについては政府も、出産一時金だの、児童手当や育児休業制度の強化などを、実施しようとしている。
 
東京都も歩調をそろえるように、18歳まで子どもに月額5000円の給付を、所得制限なしで行なおうとしている。
 
しかし森永さんは、これは方向ちがいの政策で、少子化対策にはほとんど関係がないという。
 
非正規社員の男性の平均年収は、170万くらいだから、まずほとんどは結婚できないだろう。結婚できないのに、結婚後の政策を並べてどうしようというのだ。

「少子化対策は、最低賃金を大幅に引き上げるか、同一労働同一賃金を徹底するなどして、所得格差を縮めるべきなのだが、そうした対策は一切出てこない。」
 
政府や役人が、現実に即した政策を打てないことは、一体どうすればいいのか。

ここまで劣化が急速に進んでくると、なにか息苦しくなり、あの亡霊のような、「時代閉塞の現状」という言葉が思い出されてくる。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック