新NISA、どうする?――『投資なんか、おやめなさい』(荻原博子)(2)

保険の話はまだまだ続いて面白い。
 
生命保険会社で一番いいのは、保険料が一番安い会社だという。
 
死亡保障・医療保障のみの保険料は、本来全部の会社が、同じでないとおかしい。なぜなら入院したり、死亡したりする確率は、日本人ならみな同じはずである。それなら、使っている統計は同じはずだから。
 
ところが保険料に差が出るのは、会社でかかる経費が違うからである。よって保険料の安い会社が一番いいのである。
 
なんでもこういうふうに説明してくれると、頭の中が非常にクリアになる。

「第2章 日銀の『マイナス金利』が、家計の資産を破壊する」は、この本の中では唯一、ちょっと面白い章だ。
 
まずマイナス金利で、銀行に預けることをやめた結果、「タンス預金」が増え、さらにマイナンバーカードの導入で、それがますます増えることになった。
 
マイナンバーの導入で、銀行口座が把握されるかもしれない、と恐れた人たちが、現金を家に隠そうとしたのである。
 
企業の内部留保もアベノミクスでどんどんたまり、しかし従業員の給料には、ほとんど回らなかった。もっぱら内部留保として貯め込み、あるいは株主への配当金になったのである。
 
と、ここまではよくある話である。さあ、ここからだ。
 
日銀はデフレを解消するために、お金をジャブジャブ刷った。ところが銀行は、企業に資金の需要がないので(内部留保で溜め込んでいるから)、どうしようもなく、それを2つの方法で処理した。
 
ひとつは、日銀の中にある「当座預金口座」に預けて、金利0.1%の利ザヤを稼ぐこと。「当座預金口座」とは、日銀の中にある、銀行が金を預ける口座で、このころは銀行預金の金利が0.01%だったので、0.09%の利ザヤを稼ぐことができた。
 
あまりにもみみっちいというなかれ。単位が何兆円ということになれば、利益は莫大である。
 
もう一つは、「国債」を買うという方法である。2015年には10年もの国債の金利は、0.3~0.4%であった。つまりこれでも、利ザヤは稼げる。

「日銀が『異次元の金融緩和』として出したお金のほとんどは、貸し出しにまわされずに、ただただ『当座預金口座』にブタ積みにされてきたという異常な状況になってしまいました。」
 
ここでは「ブタ積み」という言葉が、僕には珍しい。

「ブタ積み」=日銀がお金を刷っても刷っても、市中に出回ることなく、日銀の「当座預金口座」の残高のみが積み上がっていくこと、という経済学の用語があるのだろうか。

 
まさかねえ、と思って、パソコンで調べると、何とありましたよ。「市中銀行が法定準備預金額を超えて、日本銀行に預け入れている金のこと」。日銀もけっこうヤクザな商売だ、ということが分かります。
 
ともかく日銀は、これ以上タンス預金、ではなくて、「当座預金口座」のお金が増えないように、ここにマイナス金利を付けたのだ。
 
つまり「これ以上お金を当座預金口座に預けたら、預けたお金に0.1%の金利をつけるのではなく、逆に0.1%の手数料をとる」と宣言したのである。
 
そうすると銀行は、「当座預金口座」に預けられなくて、今度は一斉に国債を買いに走った。そこで国債の価格は暴騰し、利率が下がってしまった。

そして10年国債の金利は、史上初めてマイナスとなり、マイナス0.035%をつけた金利は、ついに0.3%に近づいたのである。

こうして銀行は、「行くも地獄、戻るも地獄」という状況に、追いやられてしまったのだ。
 
市民の暮らしと仕事に、まったく想像力が働かないというのが、日銀の黒田東彦ご一党さんの正体である。はっきり言って、日銀と銀行の関係は、吉本新喜劇だ。真剣に考えてる人が多いだろうから、笑っちゃいけないけれど、しかし笑うしかない。そうとしか言いようがない。
 
他の章は、「こんな投資はやめなさい」という前に、最初からやる気がしない。
 
そこで新NISAだ。どうしたものか。

(『投資なんか、おやめなさい』荻原博子
 新潮新書、2017年9月20日初刷、10月25日第4刷)

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック