青木正美のバラエティー・ブック――『昭和の古本屋を生きる―発見又発見の七十年だった―』(1)

これは46判570余ページの本だが、いわば青木正美のバラエティー・ブックである。そしてこれが最後の本である、と89歳の著者は言う。
 
最初に口絵が8ページ入っている。
 
1ページ目が「著者旧蔵の三文豪原稿」とあって、夏目漱石(「明暗」書損じ原稿)、谷崎潤一郎(「吉野葛」原稿1枚目)、江戸川乱歩(「鏡地獄」〈本人の改作版〉原稿)の3枚が並んでいる。青木さんは、作家の肉筆原稿の収集でも有名だ。
 
今となっては原稿用紙は、もうほとんど使われない。思わず「三文豪」の、書き込みのある原稿に見入ってしまう。
 
次の見開きは、青木さんの著書が8点並べてあり、それぞれにコメントが付けられている。

『「悪い仲間」考』だと、「芥川賞作家・安岡章太郎邸から払い出された資料から、仲間にもう一人の同賞作家がいたことが判明。」とか、『文藝春秋 作家原稿 流出始末記』であれば、「出版社『文藝春秋』から流出した『砂の女』などの自筆原稿の行方が明らかになるまでの苦心談。」
 
ほかに『知られざる晩年の島崎藤村』、『幻の一葉歌集追跡』、『夢二 ヨーロッパ素描帖』、『古本探偵追跡簿』、『古本探偵覚え書』、『ある「詩人古本屋」伝―風雲児ドン・ザッキーを探せ―』の6点である。そしてこれ以外にも、名著は数多い。
 
4,5ページは見開きで、葛飾の「アオキ書店」の昔を、モノクロで懐かしむ。最初は自転車屋と古本屋を兼業していたのだ。

次の見開きは、この本で扱う「田村泰次郎の戦線手記」資料で、子どものときの絵日記や同人誌、そして宣撫班の兵士のころの写真。

最後の8ページ目は田村泰次郎の続きで、「『肉体の門』上演時のパンフレット」と、『続肉体の門』の、肉感的な女性を描いた「日劇小劇場パンフ」である。
 
田村泰次郎は本文でも記されるように、「中央公論」24年新年号に、荷風、谷崎と並んで表紙を飾っている。

「はじめに 目次を兼ねて」で、以下の八篇が入っている。

  1 「田村泰次郎の戦線手記」

  2 「永六輔の時代」

  3 「若き古本屋の恋」

  4 「カストリ雑誌は生きている
       ――町の古本屋の棚にみる性風俗40年の興亡」

  5 「下町古本屋の生活と盛衰」

  6 「古本屋の船旅世界一周記」

  7 「私の徒然草」
      A 「思い出の章」
      B 「諸文献の章」
      C 「人物像の章」
      Ⅾ 「その他の章」

  8 「自筆年譜」

これまで青木正美を読んできた人であれば、ここには著者の多面的なところも、また歴史的なところ、個人史的なところもよく表われていて、青木正美を堪能できる、つまりバラエティー・ブックになっていることがわかる。

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