最高の映画――『仁義なき戦い 菅原文太伝』(1)

著者は松田美智子。この人は松田優作と結婚し、一子をもうけて離婚、その後、ノンフィクション作家、小説家として活躍中、と著者紹介にならって書いたが、他に読んだものはない。

『仁義なき戦い』は、私が大学1年のときに封切られた。しかし金がなかったので、封切りでは見ていない。もっぱら新宿昭和館や上板東映、その他、東映の二番館で見た。面白くて、シリーズ5本を、何度も何度も見た。

一発目の『仁義なき戦い』に、まずシビれた。広能昌三(菅原文太)のクライマックスのセリフ――。

「おやじさん、言うとってあげるが、あんたは初めから、わしらが担いどる神輿じゃないの。組がここまでなるのに、誰が血流しとるんや。神輿が勝手に歩けるいうんなら、歩いてみないや、のう!」
 
うう、文太のセリフが、耳にそのまま蘇ってくる!

そして最後の、映画史に残る台詞。
 
場面はこうだ。組員の葬儀の席に乗り込み、広能は祭壇に向けて銃を乱射する。そして最後に、

「山守さん、弾はまだ残っとるがよう……」

〈シン、と見送る一同の視線の中で、不適に歩み去ってゆく広能。その、孤独な、殺意に満ちた顔にーエンド・マーク〉
 
うう――。
 
学生のコンパでは、渋谷、新宿その他の酒場で、これを真似するものが続出した。もちろん私もやった。
 
そこから『仁義なき戦い 広島死闘篇』『仁義なき戦い 代理戦争』『仁義なき戦い 頂上作戦』『仁義なき戦い 完結篇』と、続けて何度も何度も見た。
 
北大路欣也がヤクザの殺し屋に扮する『広島死闘篇』は、やや異色ではあるが、これも面白い。

『代理戦争』『頂上作戦』『完結篇』は、ごちゃごちゃして、何が何だか分からないが、しかしこれも、めっぽう面白い。
 
シナリオを担当した笠原和夫が、『代理戦争』はごちゃごちゃしていて、わけがわからない、シナリオ作家にもよくわからんもんが、シリーズ最高の収益を上げるなんて、とびっくりしたものだ。
 
それから映画のテーマ曲。『仁義なき戦い』といえば、ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン、ジャンジャン、ジャジャーンジャーンジャーンジャ……。これだけは誌面に再現するのは不可能である。
 
なお『仁義なき戦い』を観て仰天したスティーヴン・スピルバーグは、面白さに感動するあまり、『ジョーズ』でサメが現れるときに、『仁義なき戦い』のテーマを流したことは、知る人はひそかによく知っている。
 
深作欣二監督の作品はまだまだ続く。『新仁義なき戦い』『新仁義なき戦い 組長の首』『新仁義なき戦い 組長最後の日』。しかしもう、そこらあたりの記憶になると曖昧である。
 
それよりも、『仁義なき戦い』から派生したといってもいい、『県警対組織暴力』が面白かった。これは朝日新聞の映画評が絶賛したので、びっくりした。
 
ここまですべて、深作監督と菅原文太のコンビで撮られた。

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