侃侃諤諤、抱腹絶倒、快刀乱麻――『蓮實養老縦横無尽――学力低下・脳・依怙贔屓』(2)

蓮實さんは、1997年から2001年まで東大の総長であり、養老さんは、1991から95年まで東京大学出版会の理事長だった。
 
この二人が対談するのだから、内容が東大の社内報みたいになるのはしょうがない。
 
たとえばサブタイトルの「学力低下」をめぐって。

「養老 頭の良い悪いってどういうことか。つまりものさし次第なんです。『血圧測ればあなたは日本ではまれなくらいに高いですよ』って言ってるだけのことで、それがどうしたんだという話です。学力低下もクソもないんで、問題はその学力をなんで測っているかってことです。」
 
要するに、そこに価値を見いだすのは勝手で、血圧も学力も同じこと、何か言うときには明確なものさしを当てて言え、ということなんだけど、これは東大医学部を論じて、言っている言葉なのだ。
 
わかりますか。東大医学部は、偏差値では並ぶものが無い高みにある。しかしそれを、ただ漠然と頭がいいと言ったって、どうしようもないということ。

もっと言えば、そんなのどうだっていい、だって全員頭がいいんだから、そこでこの話をしてもしょうがない、と。そういうことだ。

こういうところが社内報である。でももちろん、東大出版会の対談だからこれでいいのだ。
 
表題の依怙贔屓をめぐって。

「蓮實 ところで、長い間教師をしてきた私の結論は、依怙贔屓によってしか人は伸びないということです。〔中略〕いま、そういうことを言っても、なかなか通じないのですが、私ははじめから自分は依怙贔屓でゆくと公言している。」
 
ほとんどめちゃくちゃだが、実感としてはそうだろうなと思う。それはみんなそうなんじゃないか。

「個々の学生の潜在的な資質が見えてきた段階からは、教育的な配慮を平等には振り撒かないということです。もちろん、機会としての平等は守りますが、これはと思う学生には特殊な信号を送ります。あなたはすごい潜在的な資質を持っているから、私を超えるでしょう、と。」
 
蓮實さんにこう言われては、学生は奮起せざるを得ないだろう。それに、「これはと思う学生には特殊な信号を送」る、と言っているけど、これは同じ教室にいれば、「特殊な信号」は、たいていはみんなに分かるものだ。
 
ここでは蓮實さんは、実に率直に教育の現場を語っている。

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