侃侃諤諤、抱腹絶倒、快刀乱麻――『蓮實養老縦横無尽――学力低下・脳・依怙贔屓』(1)

蓮實重彥さんと養老孟司さんの対談と講演。

2001年4月18日、東京大学出版会の創立五十周年記念で、蓮實さんと養老さんの対談と講演会が行われ、これに別の時・所で行なわれた対談を加える。
 
版元は、あの懐かしい哲学書房、中野幹隆さんが一人でやっていた出版社である。
 
僕は2001年にトランスビューを作るとき、先達の中野さんに、話を聞きに行ったことがある。

そのころ哲学書房は知らぬもののない、は言いすぎか、知る人ぞ知る出版社だった。
 
昼の12時に訪ねていくと、飯を食いに行こうというので、山の上ホテル別館のシェヌーに入った。

「何もお祝いするものが無いから、昼飯をご馳走しよう。」
 
もちろんそれで十分である。そのとき、こんなことも言われた。

「出版社なんて、おやめなさい。」
 
これはかなり断定的な口調だった。しかしもちろんその気はない。これは中野さんも分かっていた。
 
それから細かいことを、いろいろ教えていただいた。取次のことや倉庫のことを。
 
それから2007年1月の、中野さんの葬儀に至るまで、二、三度顔を合わせることはあったが、親しく話すことはなかった。
 
一度だけ、電話で褒められたことがある。トランスビューの創業の2冊、『オウム―なぜ宗教はテロリズムを生んだのか―』(島田裕巳)と『昭和二十一年八月の絵日記』(山中和子、養老孟司・解説)を出したとき、「見事だ」と言われたのだ。
 
通夜の斎場で、養老先生が出てこられるところに行き合って、二言、三言、話した。中野幹隆さんは享年63、右腎盂尿管癌だった。
 
さてこの本は、帯が面白い。

「東大の資質に賭けた前総長/
 蓮實重彥と/
 東大を捨てた/
 養老孟司が/

 侃侃諤諤 論じた/
 抱腹絶倒/
 快刀乱麻 の快著」
 
まあ中野さんにしか書けない帯だ。
 
そういえば、サブタイトルの「学力低下・脳・依怙贔屓」も中野さんらしい。ここでは気取ったってしょうがない、むしろ話題になっているものを、露骨に浮かび上がらせたほうがいい、という判断だ。
 
それにしても、「依怙贔屓」をもってくるセンスには恐れ入ります。

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