ずっとワクワクさせといて――『地面師――他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(1)

森功は『鬼才――伝説の編集人 齋藤十一』、『悪だくみ――「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』、と続けて読んできて3作目。帯の表にこうある。

「全国の不動産関係者、銀行員、/デベロッパー社員、弁護士・司法書士、必読の書。
 知らない者から、喰い物にされる
 積水ハウス、アパグループ…/不動産のプロがコロッと騙された/複雑で巧妙すぎるその手口」
 
このころ夫婦で、家を買う算段をしていたので、これはぜひ読まねば、と思ったわけだ(その後結局、家を買うのはやめにした)。
 
とにかく面白そうである。東映の映画の始まりに似て、おどろおどろしい音楽が聞こえてきそうだ。
 
目次の後に「本書に登場する地面師たち」とあって、1ページで15人の地面師たちが載っている。その中でも内田マイク、北田文明といったあたりが、最大の黒幕らしい。
 
内田マイクは、「地面師詐欺の頂点に立つとされる犯行集団の頭目。一九九〇年代後半のIT・ファンドバブル当時に『池袋グループ』を率いて暗躍。逮捕されて服役したのち、数年前にカムバック。ほとんどの主要事件で、その影がちらつく。」
 
これは面白そうだが、しかし一方、警察や検察は何をしておるのかね、という疑問も湧いてくる。
 
北田文明は、「内田と比肩する大物。金融通で銀行融資を組み合わせた〝逆ザヤ〟という詐欺の手口を編み出したとされる。地面師の中でも最も稼いでいる一人。」
 
詐欺の手口はよくは分からないし、人物は興味深くもあるが、しかしこんな人を野放しにしていいのか。
 
秋葉紘子は、「数々の事件でなりすまし役の手配師として登場する大物手配師。日頃は各種施設の清掃員として働き、高齢者のネットワークからはまり役をスカウト。『池袋の女芸能プロダクション社長』の異名を持つ。」
 
これではまるで池波正太郎風の、キャラの立った盗賊の一味ではないか。「数々の事件でなりすまし役の手配師として登場」というのだから、これはもう『ルパン三世』峰不二子のいとこ、または伯母くらいのことはあるね。
 
この本では章ごとに、7つの事件が扱われている。有名なものでは「『積水ハウス』事件」や「アパホテル『溜池駐車場』事件の怪」など。他も似たような詐欺事件だ。

これは出だしはワクワクさせる。「第一章 『積水ハウス』事件」には、「スター地面師」というような小見出しもあって、いやがうえにも興味をそそる。

でもずっと、テンションはそのままなんだよね。悪い奴は、捕まってもたいがいは不起訴になるか、あるいはわずかな刑期を経て舞い戻る。
 
第一章の結びはこんなふうだ。

「内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は十一月二十日、一四人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物二人を手中に収めた。だが〔中略〕騙しとられた五五億五〇〇〇万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい。」
 
何ども言うが、日本の司法はどうなっておるのか。

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