『人生の救いー車谷長吉の人生相談ー』の「解説」を、万城目学が書いていて、おっ、と思うくらい面白かったので、小説も読んでみることにした。
京都大学の学生たちの話である。ちょっと毛色が変わっていて、オカルト・ユーモア青春小説と言ったらいいか。
京都大学のほかに、京都産業大、立命館、龍谷大学の、4つのサークルが出てくる。
そこに、何ともおかしなオニがいっぱい出てきて、それを学生たちが指揮して、戦いを繰り広げる。
オニの描写と、戦いを活写するところは、現実にないものを立ち上げるわけだから、なかなか腕がある。
ユーモアのある文体も、細かいところにまで目を配り、全体としては達者なものだ。
しかしどうも、強いオチがなくて、ヌケが悪い。
青春小説なんだから、最後に近く、ヤマがないと、読み終わっても、物足りない。
ヒロインも、なんだかパッとしなくて、ヒロインらしくない。
車谷長吉を師と仰ぐならば、言葉でどこまでも突き詰めていくのはもちろん、『赤目四十八瀧心中未遂』のように、ヒロインのアヤちゃんを、この世の外へ連れていく、くらいの意気込みがないと、せっかく創出したオニがかわいそうだ。
なんだか歯切れの悪い書評で申し訳ないが、でも、作家はここから変わることがある。と言うと、ますますこの小説を読んだらいいのか、読まない方がいいのか、わからないと思うのだけど、……つまりそういうことです。
(『鴨川ホルモー』万城目学
産業編集センター、2006年4月20日初刷、2007年1月25日第8刷)
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