ゴーンとは何者か?――『ゴーンショックー日産カルロス・ゴーン事件の真相ー』(3)

また話は変わるけれど、巻末の「参考文献」に、森山寛『もっと楽しく これまでの日産これからの日産』(2006年、講談社出版サービスセンター)という本が上がっている。刊行が講談社出版サービスセンターとなっているから、自費出版の本だ。
 
僕は、神田の学士会館で、森山寛さんが、この本をテーマに講演するのを、聞きに行ったことがある。森山さんは現役を引退しておられ、最後は日産の副社長だった。
 
この本も講演も、もう内容はうろ覚えだが、日産の「自動車労連」の会長であった塩路一郎と、森山さんたちが徹底的に戦い、最終的に勝利する話だった。

「日産の天皇」と呼ばれた、自動車労連の「暴君」、塩路一郎の話は、『ゴーンショック』の第2章「独裁の系譜」に詳しい。

「日産には、ゴーン支配のはるか前にも、同じような『独裁者』の支配を長く受け入れてきた歴史があったのである。」
 
うーん、こういう総括はやや疑問だ。労組の委員長とゴーンでは、その内実はおよそ違うと思うけど。
 
それはともかく、森山さんの本の話は面白かったが、余談に移ったときのゴーンの話が、抜群に面白かった。数字に対する冷徹な話、そしてコストカッターぶりが、日本人とは違って、僕の感想ではターミネーターみたいで、興味は尽きることがなかった。
 
目標とする数字についても、日本人とは捉え方が違う、という点が気になった。
 
僕はさっそく、講演が終わると、簡単な自己紹介をして、間近で見たゴーンさんについて書いて下さいと言った。
 
森山さんは、役職を退いたばかりだし、ゴーンさんはまだ前線で戦っているので、それは無理だと、にこやかにおっしゃった。
 
しかし『ゴーンショック』を読めば、森山さんが、ゴーンに口汚く面罵されるところが出てくる。二人は、合わなかったのだ。知らぬこととはいえ、申し訳ないことをした。
 
だいたい、ゴーンの本を一冊も読まずに交渉をする、というところからして厚かましいようだが、しかしそれほど、森山寛さんの話は面白かったのだ。
 
森山さんの本は自費出版で、なかなか手に入らないと思うが、あるいは古本で出ているかもしれない。一読を勧める。

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