ゴーンとは何者か?――『ゴーンショックー日産カルロス・ゴーン事件の真相ー』(2)

まず金の話がある。役員報酬の虚偽記載については、検察の話では、約50億円が記載されていなかった。つまり隠そうとしていたのである。
 
ゴーンにしてみれば、これは退職した後にもらう約束だから、有価証券報告書に記載されるのは、この段階ではおかしいということになる。
 
僕にはもちろん判断はできない。ただ金額の問題はある。
 
検察によれば、たとえば「サウジアラビアルートの特別背任」で動いた金の額は、12億8400万円。「オマーンルートの特別背任」で動いた金額は11億1000万円、そのうち5億5500万円は、ゴーンが実質的な支配者の、レバノン・GFI社に還流している。
 
こういうのを読んだとき、日本人でどのくらい、ケシカランと思う人がいるのだろう。桁が違い過ぎて、同じ日本で暮らしている人とは思えない。
 
ゴーンは日本よりも、フランスで問題にされることを、恐れたのだというが、よくわからない。フランス人なら、国民の多くが、ゴーンは暴利を貪って怪しからん、と思うのだろうか。

ゴーンは、日産とルノー、それに三菱自動車という、互いに舵取りの難しい会社を3つも持っている。その下に、また無数の会社がぶら下がっている。それ以外にも、個人資産を管理するための会社があった。

これは、ちょっと嫌にならんかね。考えてみれば、バカバカしいと。会社の舵取りをしてるんじゃなくて、ゴーンは、会社にこき使われているようなものじゃないか。

ま、しかしこれは、根本的な価値観の相違だから、そういうものなんだろう。これを金の亡者と言っては、ちょっと違うような気がする。

その金に関連して、ゴーンが動かした金額が、桁外れに大きいことが、逮捕されるのにふさわしい、と言うと変だな、それに値することになるのだろうか。
 
ゴーンは4回、逮捕されて、保釈になった後も、妻や子どもたちとは、接触を断たれている。
 
刑法上のことは、僕にはわからないけれども、これはそういう犯罪かね。妻子と一切接触を断つ、というような。これは何か、根本的に違和感がある。
 
それはそれとして、ゴーンはかなり変わった人である。どこまでも自力で、運命を切り開いていこうとする。
 
日産の業績を、あまりに鮮やかにⅤ字回復したのには、日本どころか世界中が驚いたが、こんどは自分が被告の裁判をすっぽかして、レバノンを舞台に、世界中の報道関係者に、自分の無実を訴えたのは、本当にびっくりした。
 
レバノンにおける記者会見は、日本では不評だったが、考えてみれば、日本国を相手に、その司法制度もまじえて、痛烈に批判するというのは、誰もやったことがない。
 
それを見ていると、日本国とゴーンは、ほとんど同格のようだ。
 
その間、日本から出国するのに、スパイ大作戦もどきの活劇を演じている。
 
そういうことも含めて、自分の運命に対して、つねに変わらぬ姿勢であろうとする。
 
日本に来て以来、日産の責任者として脚光を浴び、一転、逮捕され、国外に逃亡するまで、ゴーンは一貫して、同じ姿勢で人生を切り開いている。
 
そういう人は、これまで見たことがない。

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