大震災後の古本屋めぐり――『東北の古本屋』(2)

古書店が、「文化を繫ぐ」ことと関連させて、顕著な例として挙げているのは、郷土史誌というジャンルである。
 
新刊書店でも、少し大きなところになると、郷土史誌類はある。しかしそれは、新刊書としての郷土史誌である。
 
古書店で扱っているものは、まったくジャンルが違う。それこそ、本の厚みが違う。歴史が感じられる。
 
郷土資料は県によって、かなり濃淡があるのだろうが、それでも東北全体でいうと、半ば以上の古書店は、郷土史誌類を扱っている。

「文化を繫ぐ」ということは、直接的にはこういうことを指している。
 
もちろんそれ以外の本も扱っていて、そこに一軒ずつの個性があふれている。
 
2011年から2017年にかけての取材は、大震災と向き合って、ときに涙なしでは読めない。
 
と同時に、震災があっても、すぐにまた古本屋をやろうという気力は、どこから湧いてくるのだろうか。
 
大震災の後、古書店の再興に賭ける情熱は、僕などが本好きと言っているのとは、次元が違うような気がする。

最後に、折付桂子さんの「あとがき」に触れないわけにはいかない。

「私事を書いておきたい」、という書き出しで始まる一段は、息をのむ。
 
2018年の「東北の古本屋」の連載が、終了に近づいたとき、夫の大腸癌が発見される。
 
夫は大手メーカーで研究・開発に携わるエンジニアで、仕事上はまったく別世界にいたが、折付さんの仕事を尊重し、ときに取材に同行してくれた。そういう夫婦であった。

夫はすぐに手術はしたが、肝臓にも転移があって、うまく取り切れない。

「抗癌剤治療での闘病生活を始めた矢先、十月初めに脳梗塞で倒れた。連載最終回の『福島県特集』十月号の校了直後であった。癌由来の梗塞(トルソー症候群)で打つ手がない。右半身不随で言葉も失い、絶望の中でのひと月を過ごし、夫は旅立った。」
 
淡々と記す事実には、言葉の掛けようもない。
 
最後の一行は、「この十一月に一周忌を迎える夫・故村上格に本書を捧げたい」とある。これが本当の供養というものである。

(『東北の古本屋』折付桂子、日本古書通信社、2019年11月10日初刷)

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