ぱらぱらと捲っていけば――『古本市場が私の大学だったー古本屋控え帳自選集ー』(1)

青木正美の本は、たぶん4、5冊は読んだことがある。ちくま文庫で出た『古本屋五十年』という本が最初だった。

それが面白かったので、『古書肆・弘文荘訪問記』を続けて読んだ。これはもっと面白かった。

続けて『ある古本屋の生涯』『肉筆で読む 作家の手紙』『文藝春秋作家原稿流出始末記』を読んでいる。
 
最後の『文藝春秋作家原稿流出始末記』は、古本屋商売の生々しさ、裏表がよく出ていて、何とも言えなかった。単純に、面白かったというのではない。しかしもちろん、生々しいけれど、嫌な後味が残るというのではない。

今度の本は、1986(昭和60)年から2018(平成30)年まで、『日本古書通信』に「古本屋控え帳」として連載したものから、ピックアップしたものである。

同じく私も、『古書通信』に連載しているので、これは面白いだろうというので、編集長の樽見博さんが送ってくれたものである。

ぱらぱらと読んでいくと、なるほど面白い。
 
昭和25年に、「文芸列車」という特別に編成された列車を、東京駅から出発させている。文藝春秋が招請した作家は、丹羽文雄、浜本浩、亀井勝一郎、有島生馬、久米正雄、井伏鱒二、石川淳。
 
こういう面々が、読者と一緒に列車で旅をする。時代が違うといってしまえば、それまでだが、それにしてもちょっと想像できかねる。きっと担当編集者以外は、楽しかったんだろうなあ。あるいはこの頃は、編集者も楽しんでいたのか。
 
国鉄、交通公社、文芸春秋(新)社、小諸観光協会の共催で、参加者を募集していて、総勢151名である。

一体、何両だったのか、それは、倉本彦五郎という人の残したスクラップ帳には書いてない。
 
行き先は秋の信濃路。上山田温泉、戸倉温泉、島崎藤村ゆかりの小諸懐古園を訪ね、夕方、上野駅に到着する四泊五日の旅で、費用は1200円だった。
 
これは、大人気の企画、というほどのことはなかったろう。あるいは、担当編集者が疲れてしまったのか。文芸列車はこのとき、ただ一度だけ企画されたという。

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