生き物、すべて友達――『昆虫学者はやめられないー裏山の奇人、徘徊の記ー』(2)

小松貴の生き物の本は、僕にはすべて、あっと驚く初見だから、紹介するとすれば、丸まる一冊、引用するほかなくなる。
 
それではしようがないので、ともかくアトランダムにいくつか紹介したい。
 
小松先生には、好きな虫がいて、一つは眼の退化した虫、もう一つは翅(はね)の退化した虫だ。これは理由などなくて、どうしようもなく惹きつけられるという(なんというヘンな趣味!)。
 
眼のない虫、翅の退化した虫、といわれても、普通は何も浮かばないだろう。少なくとも、僕は何にも思い浮かばない。
 
小松貴はここでは、シャクガ科のうち、フユシャクと呼ばれるものを取り上げる。
 
シャクガ科のガは、幼虫が尺取虫として知られ、そのうち一部の種は、寒冷期に限って活動する。それで俗にフユシャクと呼ばれ、日本には30種前後がいる。
 
このフユシャクは、メスに限り翅が退化(!)している。
 
ここには写真が載せられていて、チャバネフユエダシャクのオスとメスが出ている。
 
オスの方は、翅を広げてとまる、いかにも黄色っぽいガであるのに対し、メスの方は、メリハリのある白地に黒のまだら模様、そしてメスには、翅が全くない。
 
このメスは、「まるでミニチュアのホルスタインだ。何も知らない人がこの2匹の昆虫を見たら、間違っても同種の夫婦だなんて思う訳がない。」
 
この辺はぜひ写真を見てほしい。あっと驚くこと、疑いなしである。

言い忘れたが本書には、痒い所に手が届くように、実にふんだんに貴重な写真が入っている。
 
小松先生はまた、昆虫の匂いの点でも、独特の偏った好みがある。

「ゴミムシの仲間は危険を感じると異臭を放って敵を遠ざけるが、アオゴミムシ類は俗に『クレゾール臭』と称される、まるで正露丸のような薬品臭を出す。幼い頃、私はこの特徴的な異臭を放つアオゴミムシ類を好まなかった。しかし、今はむしろこの臭いが嗅ぎたくて仕方なく、しばらく嗅がないでいると禁断症状が現れるまでに至っている。」
 
だいたい僕なんか、昆虫の臭いというものに、はっきりしたイメージを持っていない。そうか、「クレゾール臭」か。なんとなく、臭ってきたぞ。だんだん気持ちが悪くなってきた。                

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