韓流!――『82年生まれ、キム・ジヨン』(5)

会社の中でも、キム・ジヨン氏は努力した。企画チームの新たなプロジェクトは、会社の中核を担うと思われていたから、ぜひともやりたかった。

でも社長は、同期の二人の男性を入れて、キム・ジヨン氏と、もう一人の女性をはずした。
 
社長は、女性にとって業務と結婚生活や、特に育児との両立が、難しいことを知っていた。だから女性社員は、初めから外したのだ。
 
女性が働きやすくするために、福利厚生に力を入れるよりも、男性社員をそのまま働かせた方が効率的だ、というのが社長の判断だった。

「事業家の目標は結局お金を稼ぐことだから、最小の投資で最大の利益を上げようとする社長を非難はできない。だが、すぐ目の前に見える効率と合理性だけを追求することが、果たして公正といえるのか。公正でない世の中で、結局何が残るのか。残った者は幸福だろうか。」
 
ここは短く書かれているので、これだけだが、実はかなり深い議論を、やろうと思えばやれる、ということである。
 
この社長は、目先の効率と合理性を追求して、どこまでもそれで行こうとするが、果たしてそれでよいのだろうか。資本主義が成熟していないところでは、しばしはそれで、企業は転ぶ。
 
利いたふうなことを言っているが、僕が出版社の社長としてやっているときも、今からみれば、「すぐ目の前に見える効率と合理性だけを追求」して、他には何も見えなかったことが多々ある。最終的に、自分にとっての本、という形を目指していたので、それほど大きな間違いはしなくて済んだが、今思えば冷や汗が出る。
 
社長の言の後半に、世の中の「公正」という問題が出てくる。これについては、議論することが、本当にワンサカある。

著者の言う「公正でない世の中で、結局何が残るのか。残った者は幸福だろうか」というのも、そのうちの大きなテーマである。でも本書は、そちらへは流れていかない。

キム・ジヨン氏は、やがて妊娠する。夫婦は生まれてくる子どもを、男女どちらでもよいと思っているが、親や親戚は男の子を願っていた。

「おなかの子が娘であることがわかった瞬間、これからストレスがたまるだろうなという予感がして、ちょっと気が重くなった。キム・ジヨン氏の母はすぐさま、次に息子を産めばいいよと言い、チョン・デヒョン氏の母は大丈夫と言った。そんなこと言われたら、全然大丈夫ではない。」
 
最後の言葉、可笑しいですね。
 
いずれにせよ、キム・ジヨン氏の行く手には、どよんと大きな塊が、これからもついてまわることだろう。
 
これは、日本人の女の場合も、そして見方を変えれば、男の場合も、同じことだ。日本の場合も、男女は同権ではない。

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