奈落の底は見えない――『出版の崩壊とアマゾン―出版再販制度〈四〇年〉の攻防―』(3)

ここからは、私の推測である。
 
つい先ごろ、日本編集者学会から、第13回セミナーのお知らせが来た。
2月2日土曜日に、専修大学七号館(731号教室)で、「読者はどこへいった――雑誌出版の危機と現在の読者」というテーマで鼎談をやるという。

鼎談のメンバーは、山田健太、河野道和、阿部重夫の各氏である。なかなか面白い組み合わせだが、それよりも、その文面に注目した。

「若い層の読者は、ほとんどいなくなってしまった。普通の雑誌を買う人でも、趣味人扱いされ始めている。書店販売の中心であり、出版界の稼ぎ頭、また出版物流の要でもある雑誌の、実売数低下がもたらす影響は多岐にわたる。……これまで各雑誌が読者と考えていた大きな層の興味、好奇心が変化した現状と、雑誌が担っていた役割を振り返り、なお雑誌が出版の核となりうるのか、その可能性を探る。」
 
注目すべきは、若い層がいなくなったということと、「普通の雑誌を買う人でも、趣味人扱いされ始めている」という点である。
 
私は半身が不自由なので、書店といっても、八幡山の啓文堂にしか行けない。そこで見る限りは、確かに雑誌の棚は閑散としているが、それでも単行本と比べれば、まだ読者はいる、と思ってきた。
 
けれども、都心の大書店に行ってみれば、たぶんそうではないのだろう。
 
それにしても「普通の雑誌を買う人でも、趣味人扱いされ始めている」とは、どういうことか。純粋に好奇心から、そういう状態を見てみたい。
 
この20年で、雑誌・書籍の売り上げは、半分になった。それをもう少し正確に言うなら、書籍の売り上げは3分の2になり、雑誌の売り上げは3分の1になっている。

しかも雑誌は、近年になればなるほど、売り上げの下降幅が激しい。よほど特殊なものを除いては、雑誌というジャンルは、消滅するのではないか。誰もがそう考えて、不思議はない。

紙の雑誌を見る代わりに、タブレットやスマホで見るようになる、というか、もうなっている。

では書籍はどうか。

「書籍の分野でもガイドブック、料理・ファッションなど生活書、実用書はインターネットにすでに移行しつつあるので、この分野もあまり展望はない。残るは、その他の一般書籍・専門書籍である。文庫・新書はさらに後退するかもしれない。絵本などの児童書は底堅い。その他の一般書籍・専門書籍は売上後退を続けながらも最後までしぶとく生き残りそうである。」
 
そうなることを私も祈っている。でも、どうなるか。

「初版五〇〇部からせいぜい三〇〇〇部位の本で、市場規模でいえば五〇〇〇億円に満たない市場であろう。……
 そこに必要な取次店は今の半分以下にダウンサイジングした書籍を中心とする取次店である。」
 
緑風出版の高須次郎が、そう言いたい気持ちはわかるが、しかしなかなか、そうはいかないのではないか。

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