悪い奴らだが――『サカナとヤクザ―暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う―』

これは面白い。著者の鈴木智彦は、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部を経て、『実話時代BULL』の編集長を務めたのち、フリーとして週刊誌などに、暴力団関連記事を書いている。
 
海産物のうち、アワビ、ナマコ、カニ、ウナギは高価だから、暴力団が密漁している。これがなかなか取り締まれない。
 
この本はかなり巧みに作ってあって、6章のうち半分は、直接取材している。あとの半分は、書物をツギハギしている。そのツギハギの部分が、少し弱い。
 
しかし全体としては、かなりよくできている。三陸アワビの密漁団、築地市場で密漁の行方を追う、黒いダイヤ・ナマコ、暴力団が牛耳っていた銚子、東西冷戦に翻弄されたカニの戦後史、ウナギの九州・台湾・香港シンジケートを追って、といった具合だ。
 
密漁に関しては、まず税金の類いを払わない、禁漁期間に禁漁区域で採る、採ってはいけない稚魚を採る、採れた地域をいつわる、といったところだが、もちろんそこには、ヤクザが群がる。

「密漁を求めて全国を、時に海外を回り、結果、平成25年から丸5年取材することになってしまった。関係者にとって周知の事実でも、これまでその詳細が報道されたことはほとんどなく、取材はまるでアドベンチャー・ツアーだった。」
 
確かにそういうことなのだが、読み終わって、これは困ったことだという気には、もうひとつなれない。
 
WEBRONZAの書評頁「神保町の匠」で、幻冬舎新書編集長の小木田順子さんが、「『悪いヤツらの話はなんでこんなに面白いんだろう!』というのが、一番の本音の感想だった」と記している。
 
そうなのだ、結局、悪い奴らも直接、市民に手を出すわけではない。悪いことは悪いが、でも彼らの悪足掻きは、見ていてちょっと面白いところもある。
 
それに、広く世界を見れば、漁業権だのなんだのは、いってみれば、むりやり設定したものじゃないか。
 
タラバガニが、ロシア産だの日本産だの、カニには関係ないじゃないか。禁漁区域も、禁漁期間も、人間が勝手に決めたものだろう。

もちろんそんなことを言っていれば、たちまち漁獲資源は枯渇する。たがら、ヤクザには一片の利もない、ということを前提に、それでも、「悪いヤツらの話はなんでこんなに面白いんだろう!」ということだ。

(『サカナとヤクザ―暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う―』
 鈴木智彦、小学館、2018年10月16日初刷、11月18日第3刷)

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