冷静に、ひたすら冷静に読む――『Black Box ブラックボックス』(3)

その後、著者と山口敬之氏との間で、緊迫したメールのやり取りがあり、また原宿署の担当刑事の努力もあって、山口氏は、アメリカを発って日本に入国してきたところを、逮捕されることになった。
 
しかしその直前、逮捕は取り止めになる。著者が頼りにしていた刑事は、担当を外され、この事件を管轄していた検事も、担当を外された。これは、まったく異例のことだという。
 
この事件は、警視庁が扱うことになったのだ。
 
著者の弁護士は、この話を聞いて、「こんなテレビドラマみたいな話が本当にあるのか」と驚いたという。逮捕状を取って、逮捕される直前に、取りやめになるというのは、あまりに不自然だからだ。
 
逮捕状は、なぜ執行されなかったのか。
「上層部の一言で裁判所の決定が覆され、逮捕が行われず、捜査が闇に葬られてしまったのだとしたら、それは徹底的に問うべき問題であった。」
 
ここではじめて、山口敬之氏と、安倍晋三首相の話が出てくる。

「山口氏は、検事による聴取から四ヶ月ほど経った二〇一六年五月三十日、TBSを退社した。ひと月後、安倍首相について書いた『総理』(幻冬舎)という本を上梓し、コメンテーターとして、さかんにテレビに登場するようになった。」
 
つまり、こういうことのために、逮捕は見送られたのではないか、というのが、著者の推測するところである。
 
しかし、一国の最相、またはその周辺が、いくら提灯記事を書いてくれたからといって、その記者が犯したレイプ事件を、握り潰すだろうか。
 
でも著者と一部マスコミは、はっきりそういう道筋を示している。

「『山口逮捕』の情報を耳にした本部の広報課長が、『TBSの記者を逮捕するのはオオゴトだ』と捉え、刑事部長や警視総監に話が届いた。
 なかでも、菅(義偉)官房長官の秘書官として絶大な信頼を得てきた中村格刑事部長(当時)が隠蔽を指示した可能性が、これまでに取り沙汰されてきた。」(「週刊新潮」2017年五5月18日号、著者による抜粋)
 
これは相当、踏み込んだ書き方だ。森友学園や加計学園の場合は、いかにも程度の低いごたごたが起きているけれど、しかし、その程度の低さ加減も含めて、これはいかにもという気がする。

それにこれらは、法に定めたことに違反しているかどうかの、法定犯罪にかかわる事件だ。

けれども、こちらは「レイプ事件」である。森友や加計とは、まったく水準が違う。
 
著者はあるとき、知人のジャーナリストから、こんな連絡をもらった。

「政府サイドが各メディアに対し、あれは筋の悪いネタだから触れないほうが良いなどと、報道自粛を勧めている。
・・・・・・なぜ政府サイドがここまで本件に介入する必要があるのか、不可解。」

「政府サイド」が、マスコミに圧力をかける。よしゃあいいのになあ。こういうのを、馬脚を露わすという。

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