日本の負の縮図――『東芝の悲劇』(3)

東芝の原発は、ゼネラル・エレクトリックから、沸騰水型原子炉を技術供与されていた。そこに原発メーカーのウェスチングハウスが、加圧水型原子炉を引っ提げて、企業ごと売りに出される。

これを千載一隅のチャンスと捉えたのが、会長の西室泰三だった。両方の原子炉をもてれば、商売の上で鬼に金棒ではないかと、その当時は考えた。

西田厚聰もまた、東芝がウェスチングハウスを持てば、世界中で商売ができると考えた。そして三菱と競争して、あろうことか適正価値の三倍もの価格で買収している。

このとき、ウェスチングハウスは巧妙な罠を仕掛け、東芝と三菱を無理に競わせ、降りられなくさせたと言われている。

また両社の競り合いの背後には、経産省資源エネルギー庁の存在があって、「経産省は『日本勢で買え、買え』とうるさかった(東芝の担当役員)」、「エネ庁はGEに持っていかれるのを恐れていて『絶対に競り落とせ』という感じだった(三菱重工の関係幹部)」。

つまり東芝は(三菱重工もだが)、原発に関しては経産省と、二人三脚で歩を進めているのである。

ところがその後、次の佐々木則夫社長のときに、福島第一原発事故が起こり、世界からの原発工事の要請は止んだ。ウェスチングハウスは実に金食い虫で、あげくの果てには今年、2017年に経営破綻している。ウェスチングハウスに投資した資金は、まったくの無駄金だったわけだ。

こういうときに、原発の旗を振った経産省は、知らん顔である。中央の役所が後ろ盾だと、ある時期までは、たしかに心強かったかもしれないが、それでは世界規模の変革に、後れを取るのではないか。政治家や役人とスクラムを組むのは、ある時期からは、危険なことなのではないか。
 
東芝は、佐々木社長のときには、にっちもさっちも行かなくなっていた。リーマンショックに伴う世界経済危機が東芝を襲い、バイセル取引による粉飾決算は、どうにもならないところまで来ていた。決算の無理を暴き立てる、内部告発が続いた。

さらに悪いことに、佐々木社長は東芝へ入って以来、原発一筋だった。原発は過去のもの、という割り切り方は絶対にできなかった。
 
こうして東芝は、崩壊への道をひたすら走った。「一国は一人を以て興り、一人を以て滅ぶ。東芝で起きたことは、それだった。どこの会社でも起こりうることである。」この4人の社長は、東芝グループ20万人のトップというには、まるで足りなかったのだ。

元広報室長は「模倣の西室、無能の岡村、野望の西田、無謀の佐々木」と評した。東芝で起こったことは、一言でいうと「経営不祥事」、すなわち「人災」だった。

これが著者の結論だ。しかし、この本を読んでの私の考えは違う。

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