血沸き肉躍る!――『新聞記者』(3)

著者はその後、森友問題を取材するチームに、社会部から一人だけはいっている(森友問題のメインは政治部である)。そうして、安倍首相の夫人・昭恵さんから受け取ったという現金100万円を、森友学園の郵便振替口座に入金するその受領証を、カメラで写して、編集部へ送信した。
 
ちょうどそのころ著者は、母の死に遭遇している。母は、限りなく大きな存在だった。

「中学2年生のときに吉田ルイ子さんの著書『南ア・アパルトヘイト共和国』を母が進めてくれなかったら、報道に携わる仕事にはきっと就いていなかった。
もっとさかのぼれば、小学生のころに演劇の楽しさに魅せられ、一時は舞台女優に憧れたのも、母の影響を強く受けていたからだった。」
新聞記者というのも、場合によっては、一代でできる仕事ではないのだ。
 
森友問題を追いかけ始めたころ、「愛媛に第2の森友問題がある」という指摘が飛び交っていた。加計学園の獣医学部新設に関する疑惑である。今度はこのチームに入った。
 
何か突破口はないかと思案していると、読売新聞が目を疑うような記事を出してきた。
「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」
 
紙面を見ると、首相官邸と対立している前川喜平前事務次官が、怪しい罪を犯したか、と早とちりするような記事だが、じつは何も確定したことは述べていない。
 
僕が思うに、これは安倍首相の「お友だち」である読売新聞が、援護射撃を狙った、典型的なガセネタとも言えないヨタキジである。
 
さっそく著者は、前川前次官にインタビューしている。この中で前川さんは、出会い系バーを「探検」していて、少しそれるかもしれないが、こんなことを話している。

「出会い系バーで話をした女性のなかには、高校卒業資格をもっていないケースも少なくなかったという。ほとんどが数学の単位を取得できずに挫折し、生きていくための日銭を稼ぐために出会い系バーに出入りしているとも聞かされた。」
 
ここまでは、如何にも文科省のキレモノ次官が言いそうなことだ。その次を読んで、僕は仰天した。

「『日本の高校教育における数学は難しすぎるんじゃないかな』
 場合によっては高校の卒業資格から数学を排除してもいいのではないかと文部科学省内で主張したこともあったが、相手にされることはなかったそうだ。」

『新聞記者』の本筋からは外れるので、この話はここでおしまいになるが、この前川前事務次官の、数学を高校の卒業資格から除外を、という提言は、真に画期的なことだ。角川新書の編集者には、次は前川前事務次官が執筆者で、『数学よさらば―新しい高校卒業資格の提案―』(仮)というのを書いてもらいたい。もう少し加工すれは、爆弾のような新書になると思う。

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