血沸き肉躍る!――『新聞記者』(2)

著者は千葉支局、横浜支局と渡り歩き、そこで汚職を摘発したり、また「日歯連」の汚職に関しては、取材源の秘匿をめぐって、東京地検の取り調べまで受けている(もちろん検察が、著者の取材源を特定しようとしても、それは絶対に明かすことはできない)。

面白いのは、取材費の使い過ぎを、素直に反省しているところだ。

「実は少し前から、取材経費を使いすぎていると会社側から注意を受けていた。ハイヤーと、関係者との会食代だ。
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 張り込みに際しては、ハイヤーをかなり使っていたとはいえ、大いに反省すべき点はある。たとえば取材以外の所用で2、3時間抜けるときでも、ハイヤーをそのままキープしていた。夜の取材が長引き、夜が明けてからの朝駆け取材も早いときには、数時間だけおいて、すぐまたハイヤーを手配していたこともあった。」
 
そこで会社から睨まれたわけだが、しかしそもそも新聞記者の場合、適正な経費の使い方というのは、あるのだろうか。取材の一番根幹に関わってきそうなところだが、新聞記者の経費の使い方について、突っ込んだ議論をしたものは、読んだことがない。
 
その後、著者は整理部からさいたま支局に移った。この1年半は、心身ともに充実していたという。たぶん取材をしない整理部という部署が、いったんはタメの時期になり、よかったのだろう。
 
著者はさいたま支局で、虐待事件を取材したことがある。母親が育児放棄して、子どもは糞尿の中で、遺体で発見されたという。けれども取材をしていくうちに、母親もまた、その母親に幼少のときからネグレクトされ、母親となってからは、子育てに関し相談できる人もなく、孤立していった。これは「鬼母」などという言葉では、捉えきれない事件だ。

「つらい事件では思いが積もる。しんどくなって、車の中で行きも帰りもよく泣いた。新聞記者は実際に涙を流すかどうかは別にして、だれもが泣いているのではないかと思う。」
 
新聞記者のこういうところも、初めて見た。実際に仕事で泣く記者が、望月さん以外に大勢いるのだろうか。実に興味津々だ。

これを読んで、新聞記者を志す人は、必ずいると思う。マスコミはネットにしてやられて、気息えんえんだが、救世主現わるというところか。
 
著者はその後、結婚し子供も生まれる。そうなると出産前と違って、夜討ち朝駆けの取材はできない。夜中に、何度も泣き声を上げる子に授乳していると、寝不足にも悩まされた。
 
戦力にならずに、参ったなあと思っているとき、経済部の部長が、腰を据えて調査報道をやってみれば、と声をかけてくれた。ここから、あの『武器輸出と日本企業』が生まれたのだ。
 
とはいっても、三菱重工業をはじめ、中小企業や下請けに至るまで、「東京新聞の望月という記者には気をつけろ、取材に応じるな」というお触れは回っていた。それでも、そこを突破して取材をする。

「取材を重ねていると『本当にこれでいいのか』と私と同じような疑問や懸念を覚え、匿名を条件に取材に応じてくれる官僚や研究者、企業関係者がちらほらと出始めた。」
 
そういう声を丹念に集めて、『武器輸出と日本企業』は出来たのだ。

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