キツネ目の男――『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた五〇年―』(4)

宮崎学はまた、銃撃戦にも遭遇している。いや遭遇という言い方は正確ではない。出し抜けに、腹を拳銃で撃たれたのだ。
 
舞台は夕刻の京都のレストラン、ヤクザ同士が角つき合わせている。

「それは突然に、まったく突如として起った。カーテンの後ろで『パン、パン』という乾いた炸裂音が三回ほど響き、その音に合わせるようにして、横に坐っていた鉄の上体がいきなり、がくん、がくんと大きく波打った。
 ・・・・・・私は反射的に立ち上がり、
『止めえ! こらっ!』と村上に向かって怒鳴った。」
 
その瞬間、銃口から火煙が噴き出て、著者は撃たれる。
「その火煙が突き刺さったかのように右腹部に途方もなく熱いものが走った。」
 
著者の真骨頂はここから先である。銃撃によって負傷したわが身を対象に、精緻な描写が続く。

「切り裂かれ、灼かれる・・・・・・銃撃されたときの感触は、そんな感じだった。銃口から火煙が吹き出した瞬間、腹部に切り裂かれたような激痛が走り、内部を熱いものが駆けめぐった。灼かれるような熱さだった。もっと具体的に表現すれば、火で真っ赤に灼いた中華料理用の肉厚の包丁をいきなり腹に刺し込まれた、といった感じだった。息ができないほど、熱く痛い。とっさに両手で熱い芯を押さえ、ソファに腰から崩れ落ちた。」
 
その分析的描写は、この後まだ続く。
驚くべきは、銃撃戦の犯人は捕まったが、他の関係者は、撃たれた著者も含めて、みんな逃げおおせていることだ(しかしそのことを、本に書いてもいいのかね)。
 
終わりの方に、「バブルの時代」の考察が述べられている。

「私から見れば、バブルをあそこまで膨らませたのには、金融機関、ことに銀行が果たした役割が決定的に大きい。というより、銀行こそバブルの主役だった。銀行のお手盛りの貸し出し競争がなかったならば、バブルは絶対に起きなかった。」
 
それをもう少し説明すると、次のようになる。
大手優良企業は、転換社債などを利用して、株式市場から金利の安い資金を調達できるようになり、銀行に頼る必要がなくなった。

「だが、銀行には金がだぶついている。自然、銀行の金は優良ではない企業に流れていくことになる。非優良企業は生き残るために本来的に投機的なことをやるものであり、銀行の金を得たことで一気に投機性を煽られた、というのがバブルの基本的な構造だったように思う。」
 
これは明快極まる見方だ。しかしそれ以外にも、じつはもう少し深いところまで掘り進んで抉っている。

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