キツネ目の男――『突破者―戦後史の陰を駆け抜けた五〇年―』(3)

宮崎学は、グリコ・森永事件で浮上したキツネ目の男にそっくりだ、と言うことで評判になった。もちろん官憲に対抗するヤクザということで、状況証拠は真っ黒である。
 
執拗に刑事に狙われ、ついには自宅での事情聴取に応じている。しかしここでは、辛うじてアリバイがあって、無罪放免になった。
 
このとき刑事が、こんなことを言う。
「問題は株価だと思う。ターゲットにされた企業の株価が事件の進展にともなって下落し、終結宣言後は上昇する。その間に、犯人は株の空売りや買い戻しで利ざやを稼ぐ。犯人が現金を強奪しようとしたのは、株価操作のカムフラージュではないか」
 
前に、グリコ・森永事件を下敷きにした『罪の声』を読んだことがある。あのときは身代金を稼ぐと見せかけて、株価操作をするというのが、犯人側の斬新な手口だと感心したが、なあんだ、もうずいぶん前に書かれていたのか。『罪の声』、がっかりだなあ。それなら、もう一工夫、二工夫しなければ。
 
それはともかく、キツネ目の男の件では、官憲に執拗に付け狙われた。

「一番腹立たしいのは、警察が私をグリコ犯だと広言していることだった。企業恐喝で逮捕されたときに私を取り調べた刑事が、
『学がグリコ犯だ。警察に対する挑戦的な態度といい、マスコミを巧みに利用するやり方といい、手口がそっくりや。それにあいつは倒産して金に困っとる』
 といい、刑事係長も『間違いない』と発言していることを人づてに聞いた。」
 
警察もまったくひどいものだが、しかし無責任なところから見ていると、申し訳ないけれど、可笑しい。
 
もちろん著者は逆襲し、京都府警に怒鳴り込みにいく。
「『ええかげんなこというたら承知せえへんぞ。こらっ!』といっておいたが、そんなことをいえばいうほどドツボにはまることはよくわかっていた。」
 
僕だけではなくて、著者も、おかしくなって笑う以外に、手がないようだ。

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