凡庸な本――『ドキュメント 日本会議』

これは、読んでおかねばと思って手に取ったが、たいして面白くなかった。しかし面白くないぶん、逆に考えさせられもした。
 
著者の藤生明氏は1967年生まれ。朝日新聞に入り、長崎支局などを経て、AERA編集部へ。その後、2014年からは東京社会部で右派全般を担当し、現在は編集委員を務める。
 
帯の裏には「日本会議――/1997年に結成され、『草の根保守主義』を標榜。/会員約四万人。日本会議国会議員懇談会約290人。/同地方議員連盟約1800人。全都道府県に地方本部を置き、/250の地方支部を持つ保守運動体。/それは、/『日本を裏支配するシンジケート』/なのか?」
 
表には「すべて事実!」と、大きな書体で書かれている。思わず買っちゃうでしょう。
 
とにかく「常に改憲勢力の中心にあり続け、教育基本法の改正推進のほか、国立追悼施設建設、女系天皇、夫婦別姓、外国人地方参政権いずれにも反対し、実現阻止のための活動を精力的に展開してきた」、という謎の組織のドキュメントだ。
 
でもね、なぜドキュメントかというと、丹念に取材はしているけど、ただそれだけなんだよね。非常に細かい、緻密な、でも通り一遍の取材なんだなあ。だから、これを逆から見れば、よく言えば、ドキュメントとしか言いようがないわけ。
 
発端は1966年、長崎大学有志の会が自治会選挙で、左翼学生に勝利を収め、それから組織の名前を変え、いくつかあった組織を統合し、97年に日本会議が結成される。
 
そこに至る途中で、取材している著者は、こんな感想を漏らす。
「・・・・・・署名を集め、地方組織をつくり、地方議会の決議を積み上げていった。私は、彼らの思想には必ずしも同意しないが、極めてまじめな、できる人々の集まりなのだ。」
 
これ、おかしいでしょう。「必ずしも同意しない」って、どういうこと? 「極めてまじめな」学生たちなら、ほかにもたとえば、人殺しを続けていった連合赤軍事件もあったなあ。
 
それはともかく、こういう細かい動きをとらえても、大きな流れとしては、とくに思想的な流れとしては、深いところが出てこないのだ。
 
ほぼ半世紀にわたる流れを見ても、相も変わらぬ空念仏ばかりで、これが日本会議に集約されることは、はたして「驚異」なのだろうか。
 
政治家は票になれば、何でも欲しいだろうが、しかしそれは本当に黒い核として、中心にあり続けるのだろうか。
 
こういう「凡庸な本」を読むと、「引き続きこの特異な組織に注目していきたい」、という感想にならない感想しか、出てこないじゃないか。

(『ドキュメント 日本会議』藤生明、ちくま新書、2017年5月10日初刷)

この記事へのコメント