「孤独なバツタ」のその後――『バッタを倒しにアフリカへ』(1)

前野ウルド浩太郎氏の前著である、『孤独なバッタが群れるとき――サバクトビバッタの相変異と大発生』(東海大学出版部)は2013年、第4回「いける本大賞」を受賞した。

同時に受賞したのは、白井聰『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)、堀川惠子『永山則夫――封印された鑑定記録』(岩波書店)である。

「いける本大賞」の授賞式には、著者は三人とも見えた。『孤独なバッタが群れるとき』は、受賞理由を、僕が申し述べた。30歳を過ぎたばかりの前野ウルド浩太郎氏は、民族衣装に身を包み、神妙に、喜びを抑えながら聞いていた。

この年の三冊は、考えてみれば、絶妙の組み合わせだった。これは元講談社、鷲尾賢也氏の、見事な差配によるものだ。授賞式は例年のごとく、幻冬舎新書編集長、小木田順子さんの名司会で執り行われた。

ちなみに、著者の名前の「ウルド」というのは、モーリタニアでのサバクトビバッタの研究が認められ、現地でミドルネームを与えられたもので、「××の子孫」の意味であるそうな。

そこで二冊目の『バッタを倒しにアフリカへ』だが、これは一冊目を読んだ人間には、若干物足りない。
もちろん一冊目の『孤独なバッタが群れるとき』よりも、モーリタニアでの著者の活躍は詳細だし、筆の運びも手慣れてきている。

しかし肝心の、サバクトビバッタに関する叙述が、少なすぎるのだ。最初の本は、サバクトビバッタのデータが、詳細すぎると言えばいえる。つまりこれは、理科系の本なのだ。その分、モーリタニアの、日々の暮らしの叙述は少ない。

逆に二冊目の本は、モーリタニアでの日常が書きこまれた分だけ、サバクトビバッタのデータは少ないのである。でもこれは、ないものねだりをやめて、二冊あわせて読めばいいのだ、ともいえる。

まず最初に、著者の決意表明がある。
「研究対象となるサバクトビバッタは砂漠に生息しており、野外生態をじっくりと観察するためにはサハラ砂漠で野宿しなくてはならない。」

そこで落ち着く先は、モーリタニアの国立サバクトビバッタ研究所、そこのババ所長から、盛大な歓迎の言葉を受ける。

「砂漠で行うフィールドワークは過酷なので、研究者は実験室に籠りたがる中で、コータローはよくフィールドに来る決心をしてくれた。我々は日本から来たサムライを歓迎する。」
 
こうして著者は、「バッタネットワーク」の一員として、迎えられることになった。

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