燃やしてくれといったけど――『あの頃――単行本未収録エッセイ集』(3)

田村正和の、『赤穂浪士』に言及したものもある。これは面白い。

「田村正和扮する堀田隼人が出てくる。カスカスの千代紙人形が歩いてくる。一人でニヒルになりくり返っていて、どうしようもない。ニヒルすぎてか、言ってることも聞きとれない。」
 
どうも、ひどいもんだ。で、これが、どんどんエスカレートしていく。

「ずっと前、田村正和はよかったのだ。だんだん、だんだん、こんなになってしまった。体でも悪いのかもしれない。私が心配したって仕様がない。兄さんと弟さんが、考え方とか病気とかを直すように、注意してあげたらどうなんだろう。」
 
田村正和はその後、「警部補 古畑任三郎」で、パロディ化した田村正和を、本人自らが演じることによって危機を脱した。
 
とまあ、こういうふうに挙げてくると、そこそこ面白いような気はするのだが、でも500ページのうちで、いいもの悪いものの、落差がありすぎる。そしてどちらかといえば、悪いものの方が多い。

おそらく武田百合子は、編者の娘さんが言うように、徹底的に、初出原稿に手を加えたに違いない。それでなければ、手を加えるのが間に合わなければ、焼けと言った。

でも、著者はもう亡くなったのだから、どうしようもない。手元に残った原稿は、いよいよ重くなる。しょうがない、本にせねば、しょうがない。
 
こういうエッセイ集は、ネットが主流の時代には、もう編まれないんじゃないか、と思う。その意味では、最後の本と言っていいかもしれない。

(『あの頃――単行本未収録エッセイ集』
 武田百合子、編者・武田花、中央公論新社、2017年3月25日初刷)

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