これは難しい――『独裁国家・北朝鮮の実像―核・ミサイル・金正恩体制―』(2)

そもそも北朝鮮と向き合うときの、心構えの問題がある。
「坂井 ・・・・・・北朝鮮というのは交渉するに値しない、決めても守らない国なのか、それとも、交渉でギリギリのところを狙ってくるかもしれないけれど、根本的には信頼できないわけではない国なのか、どう思いますか。
 
 平岩 私はどちらかと言うと後者だと思っていますね。北朝鮮って、確かにずるいところはあるんだけど、北朝鮮からすると日本やアメリカや韓国だって。・・・・・・
 北朝鮮が一方的に約束を破ったことというのは、あんまりないような気がするんですよね。」
 
ほんとかね。考えてみれば、そういう目で、北朝鮮を見たことはないから、盲点であると言えば言える。でも、北朝鮮、よくわからないなあ。
 
かつての6者協議についても、新しい見方が示される。もちろん僕にとって、新しいということだが。

「中国にとっての北朝鮮でのレッドライン(超えてはならない一線)は、北朝鮮自身が核戦力を増強することよりも、それに対する国際社会の反応、具体的には、アメリカの過激な行動であり、さらには韓国、日本、台湾が核保有に向けて動き始めることなのかもしれません。6者協議はそうしたレッドラインを越えさせないための枠組みと言ってもいいかもしれませんね。」(平岩)
 
へー、そうかあ、そういうことか。しかしこれも、見方によるだろう。
 
北朝鮮の経済状況は、もうどん詰まりまで来ている、という見方も根強い。北朝鮮で隠し撮りされた、地方の食糧事情などを見ると、いかにも悲惨なありさまである。

ところが、「経済状況全体に対する評価で言うと、韓国で出される様々な推計を見ても、金正恩時代になって以降、微弱ながら北朝鮮経済は成長の傾向にある。たしかに苦戦しているのは間違いないと思うけれど、それをもって、『ギブアップ寸前』と見るのはどうか。」(坂井)
 
たしかにこれなんかは、繰り返しやってるテレビの洗脳の臭いがする。
要するに、北朝鮮は破綻国家で、経済はちゃんと回っていなくて、若い最高指導者が気まぐれに、ちょっと気に入らないことがあると、身内を含む側近をどんどん粛清しちゃう、というような見方は間違っている。彼ら二人は、そういうことを主張している。
 
しかし現実には、どんどん側近が粛清されているし、金正男は暗殺された(もちろん、あれは別人であるという、北朝鮮の報道もあるにはあるが)。やっぱりまともな国として見るのは、そうとう無理があるとしか思えない。
 
ただ次のようなことは、僕には盲点だった。
「本当に核兵器を保有することが目的だったとすれば、明示的なやり方ではなく、秘密裏に開発することも可能だったと思います。」(平岩)
 
たしかに核を秘密裏に開発し、それを隠し持っておくというのは、考えればありそうなことだ。と言うよりも、その方が恐ろしい。

しかし、そうでないやり方を、北朝鮮はとっているわけだから、核は「見世物」と考えたほうがよい。もちろん核を誤って誤射するのは、いかにもありそうな話で怖いけども。
 
他にもいろいろな点で、この本は勉強になった。なによりも北朝鮮の立場に立ってみると、というのが新鮮だった。
 
しかし一方に、個人崇拝の狂気の世界が渦巻いていて、これも僕の頭では、どうしようもなくリアルだ。

(『独裁国家・北朝鮮の実像―核・ミサイル・金正恩体制―』
  坂井隆・平岩俊司、朝日新聞出版、2017年1月30日初刷)

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