朗読の時間に、初めて翻訳書を読んでみる。翻訳書とはいっても、この本は、自分で編集を担当した本だから、直訳にならないよう、ギリギリまで日本語を仕上げてあると思う。もちろん訳者の高村幸治氏の力が大半である。99パーセントといってもいい。
朗読を続けていくと、さすがに文章は引き締まってるけれど、でも翻訳文体がごくわずか、ほんとうに何か所かある。これは訳を曖昧にしないために、いわば限定するために仕方のないことだった。
著者アンドレ・シフリンの父親、ジャック・シフリンは1931年に出版の仕事を始め、古典叢書プレイアッド版を創刊し、その後、プレイアッドを持って名門出版社ガリマールに入社している。ジャック・シフリンが独力でプレイアッドを創始したなんて、まったく知らなかった。
しかし第二次世界大戦が始まると、ジャックはユダヤ人であることを理由にガリマールを解雇され、そのままフランスに留まれば命の危険があることから、両親は1941年の夏にアメリカに亡命する。アンドレが6歳のときだった。
アメリカに渡ってからも苦難の連続で、それは僕の書いた帯に従えば、「ナチの迫害、アメリカへの亡命、貧困、赤狩り、戦争、さらには自ら選んだ出版界の絶望的な変質――幾多の試練を乗り越え、米国とヨーロッパの知的世界を結び、人間精神の輝きを数多の書物に結晶させた、稀有の出版人の自伝。」
ということになる。
朗読していて、じつに読み応えがあったが、今回とくに「第7章 変質する出版界―七〇年代以後―」が、日本の出版界と比較して、うーんと考えさせられた。
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