国会議員にぶちかます――『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(2)

ここでは和田靜香の問題提起に従い、議論が展開していく。

「私にとって税と社会保障の問題、さらに住宅問題は最も困っている。それこそ不安の根本原因だ。年金も満額給付を望めない私には、ベーシックインカムとベーシックサービスの実現は『死活問題』レベルで必要だと思う。そのための増税なら受け入れる。誰もこぼれ落ちることなく支え合い、生きていくための社会保障をぜひとも作って欲しいと考える。」
 
こういう議論はもちろん議題に上げるべきだし、理想を語るのは必要なことだ。
 
しかし、今の自民党を中心とする政治を見ていると、まるで絵空事である(これはもちろん投票する側に原因がある)。
 
それでも和田靜香の巧みな筆で、すいすい読んでしまうが、この本全体としては、やはり二つのことが、問題の中心になっている。
 
一つは環境問題、もっと詳しく言えば気候変動問題。これも議論の中身に即して言えば、言いたいことはあるが、今はやめる。

もう一つは日本固有のこととして、移民の問題がある。本当は日本固有というわけではなくて、例えば韓国とか中国でも、同じことが問題になっている。ただ日本は平均寿命が突出して長いから、この問題では世界の先頭を走っている。
 
この本では、どちらもかなり丁寧に解説し、和田靜香の問いと、小川淳也の答えも、カチリと噛み合っている。
 
日本の移民問題に関しては、技能実習生を停止し、これを雇用制度に変更しないとどうしようもない。これは一刻も早く実現しないと、いずれ外国からやって来る人は、いなくなるに違いない。
 
それにしても、56歳の和田靜香さんは、この本が売れているみたいで、ほんとによかったね。かりに10万部売れたって、入ってくる印税は、たいしたことはないだろうが、それでもバイトを馘になった身としては、ホッと一息つけるだろう。
 
この本は和田さんが、いわばご本人の存在証明として、書き終えたものだから、売れてほしいと痛切に願う。
 
で、ここからは関係のない話をする。と言っても、本そのものとは関係がある。
 
僕はこれまで、3つのデイサービスに行った。そのうち2つは、今も通っている。
 
そこでは、空いた時間に本を読む人が、ほとんどいない。

その3か所では、たぶん延べ100人くらいの人を見ている。1日の定員は20人くらいだが、3、4年間の人の入れ替わりを考えると、そのくらいの数にはなっていよう。
 
いままで僕のほかに、空いた時間に本を読む人は、男の人が一人だけ。その人は文藝春秋の校閲者だった。他には一人もいない。

デイサービスではみんな時間を持て余している。しかし本は読まない。年とった日本人は、本をまったく読まないのだ。
 
だから『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』も、年寄りは、まず読まないだろう。
 
デイサービスで、全員がぼうっと虚空を見ているとき、おもわず、ここに読者候補がいるではないか、というのは間違いなんだろうねえ。でも、ついついそう思ってしまう。

(『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』
 和田靜香・取材協力、小川淳也、左右社、2021年9月5日初刷、9月10日第2刷)
posted by 中嶋 廣 at 15:32Comment(0)日記