「酔眼方向への正しい歩み方」――『自選 ニッポン居酒屋放浪記』(1)

コロナのせいでテレビも、ドラマは再放送ばかりで見るものが無い。ぼやっとつけていると、「太田和彦のふらり旅 新・居酒屋百選」というのが目に入った。
 
一度見出すと、だらだらと毎週見てしまう。あちこち旅して、昼間は土産物屋に類するところを紹介し、夜は2,3軒の居酒屋を訪問するという、芸も何もない、と言っては何だけど、まあそういう番組である。
 
毎週見てるうちに、何ということのない番組だけど、太田和彦という人物に興味がわいた。居酒屋の主人との間合いが、見ていると、絶妙なのである。

それは一度や二度、見ただけではわからない。見る人が見れば、すぐにわかるのだろうが、私は何度か見ているうちに気がついた。
 
ネットで太田和彦を調べてみると、居酒屋関係の本をずいぶん書いている。あまりに多すぎて、どれを読んだらいいのかわからない。
 
と思っていたら、『自選 ニッポン居酒屋放浪記』というのが目に入った。これは新潮社から刊行された、『ニッポン居酒屋放浪記 立志篇』、『同 疾風篇』、『同 望郷篇』の3冊の文庫本から、著者の自選により、新たに1冊に編集されたものである。
 
これなら、ワンランク上の(何がワンランク上だかよくわからないが)、居酒屋放浪記が入っているに違いない。
 
で、さっそく読んでみると、いやあ、参りましたね。この人、文章の押し引き出し入れが、えも言われぬほど絶妙なのである。
 
もともと『小説新潮』に3年にわたって連載されていたから、そういう人を知らない私が、活字の世界のイナカモンで、どうしようもないのである。
 
内容は居酒屋巡り全16章。目次順に、松本・鳥取・釧路・金沢・高知・長崎・横浜・徳島・鹿児島・東京下町・大分・富山・那覇・仙台・札幌・神戸、それに書き下ろしで、「私の居酒屋二〇年――あとがきにかえて」が付されている。
 
各章のタイトルは、気の利いたのがついていて、「釧路の毛ガニは毛深かった」、「長崎、皿うどんに邪恋うずまく」、「横浜、アクアビットに霧笛ながれて」、「那覇、午前三時のTボーンステーキ」、「神戸、鯛のきずしに星がふる」、といった調子だ。

「解説」は、最初の3冊を1冊に収録してあって、山田詠美、川上弘美、椎名誠が入っている。これもあまりに豪華すぎて、びっくりである。
 
でもまあ、びっくりしていてもしょうがないので、本文を読んでいくことにしよう。
posted by 中嶋 廣 at 00:12Comment(0)日記