これからの日本の指針――『ふたつの日本ー「移民国家」の建前と現実ー』(5)

著者は言う。外国人労働者の募集や斡旋については、民間に任せておかず、送り出し国と日本が、直接的なかたちで関与する、ということを検討すべきではないか。
 
これは一刻も早く、政府間交渉をし、技能実習生が、『日本の下層社会』や、『あゝ野麦峠』の現実から、脱出できるようにしなければならない。これは、今現在起こっていることなのだ。

「……移民を同じ人間として受け入れ、それぞれに必要な支えを提供し、誰もができるだけ『安定した生』を生きられるように努める移民政策へと転換することができるか。安価でフレキシブルな労働力という幻想を捨て、一人ひとりが経験する当たり前の現実へと目を向けることができるか。」
 
人間個人の限界は、すぐ先にある。外国人が働くのを見て、なんとなく一段高いところから、その様子を眺めていたり、経営者になったら、突然、効率よく、低賃金で、長時間働かせたりするのが、「頭のいい」経営者であったりする。
 
でもそれは、間違った思い込みだ。
 
人間が、個人を超えるところまで踏み込んで、個人を内側から拡張、改革していくのは、実はけっこう大変である。
 
自分のことを考えたって、そう思う。

『日本の下層社会』や『あゝ野麦峠』なんて、古い話で、関係ないや、と思っていると、見事に足をすくわれる。

「今、目の前にふたつの道があるーー撤退ではなく関与の方へ、周縁化ではなく包摂の方へ、そして排除ではなく連帯の方へ。これは『彼ら』の話ではない。これは『私たち』の問題である。」
 
実際、卑近な話をすれば、ここから五年以内に、日本が浮かび上がれるか、沈んでいくか、の結果がおそらく出るだろう。
 
日本の人口が急減していく話も含めて、ここから先、外国人については、日本に来てくれるか、くれないか、という話になるはずだ。

その時、私たちの態度が問題になる。
 
この本は、実に内容が豊富で、私が紹介したところは、全体のごくわずかに過ぎない。もし今年も、「新書大賞」があるとすれば、筆頭に挙げられる本である。

(『ふたつの日本ー「移民国家」の建前と現実ー』
 望月優大、講談社現代新書、2019年3月20日初刷)
posted by 中嶋 廣 at 11:11Comment(0)日記