これからの日本の指針――『ふたつの日本ー「移民国家」の建前と現実ー』(1)

これは『コンビニ外国人』、『知っておきたい入管法ー増える外国人と共生できるかー』に続けて読んだ本である。

『コンビニ外国人』は、全体の流れを理解するには役に立つが、2018年秋の入管法改正前の刊行なので、話が少しずれている。

『知っておきたい入管法』は、入管法改正以後の本で、それを含み込んで書いている。しかしこれは、どちらかといえば、外国人を取り締まる側の本なので、現実を見れば、絵に描いた餅のところがあり、ちぐはぐなところもある。

その点では、『ふたつの日本』が、もっとも現実を抉り、先の見通しも正確であるとおもわれる。そもそも、「『移民国家』の建前と現実」という、サブタイトルにしてからが、当たり前のことではあるが、現実を直視している。

著者の望月優大(もちづき・ひろき)氏は1985年生まれ、日本の移民文化・移民事情を伝える、ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」の編集長を務めている。

もともとは東大の大学院修士課程を出て、経済産業省に勤め、その後グーグル、スマートニュースなどを経て、2017年に独立。移民・難民問題を中心に取材し、「現代ビジネス」や「ニューズウィーク日本版」など、雑誌やウェブ媒体に寄稿している。株式会社コモンセンスの代表を務め、非営利団体等の支援にも携わっている。

こういう、現代の第一線で活躍しているらしい人の略歴を見ると、「東大大学院を出て経済産業省」以外は、どういうふうに食っていけてるのか、ほとんどわからない。実に興味がある。

それはともかく、まず読んでみよう。

2018年末の臨時国会で、新たな在留資格である「特定技能」の創設が決まった。これについては、後で詳しく見ていくが、これによって、日本で働く外国人は、ますます増えてゆくに違いないと思われる。

けれども、肝心の私たちの「視線」は、今も大して変わっていない。

「大きく変化した現実に対して、私たちの感覚は追いつけていない。」
 
著者は、そう言う。なぜか。

「日本では長らく『移民』という言葉自体がタブー視されてきた。……今でもなお政府は『移民』という言葉を意図的に避け、まるで日本が一つの巨大な人材会社でもあるかのように、労働者たちを『外国人材』と呼んでいる。日本にはいまだに移民や外国人の支援や社会統合を専門とする省庁も存在しない。」
 
そこでこの本で、私たちを覚醒し、外国人のいる日本の風景を、というよりも、その風景を見る私たちの「視線」を、変えてしまおうというのが、著者の目論見である。
posted by 中嶋 廣 at 15:58Comment(0)日記