ポイントカードについては、書店の組合である日本書店商業組合連合会(以下、日書連と略す)が反対してきた。
当たり前である。書店では、本は一律、定価で売られている。そこに、ポイントカードで割り引く店が出てくれば、書店は太刀打ちできない。
日本の代表的な出版社が入っている書協は、ポイントカードに反対しながらも、具体的な行動は躊躇していた。
講談社は副社長名義の声明で、「『誠に遺憾であり、再販契約が順守されることを願っております』というものであった。『願っております』というだけで、当事者としての自覚と主体性に欠け、再販契約を遵守させる意思の乏しいものであった。」
これは小学館も同じで、やはり反対を表明したのだが、再販契約をお願いいたします、と腰が引けていた。
そしてこれ以降、筑摩書房、東洋経済新報社、集英社などが、ポイントカードは再販契約に違反した、値引きであることを表明した。
「しかしいずれもポイントカードの中止を求めるものではなく、ルールに則った営業活動を『お願い申し上げます』という域をでなかった。再販契約の実施者としての自覚に欠けるお粗末なものであった。」
この辺は、論評は避ける。私が社長をしてきたトランスビューは、極小出版社ではあるけれど、とにかくその当時、同じ空気を吸って生きてきたのである。横目で大手の出版社を見ながら、これではどうしようもないなと思いながら、でも私の作る本だけは違う、だから、流通が少々おかしなことになっても大丈夫だと、実に能天気に思っていた。
本当に考えてみれば、実にどうも、能天気としか言いようがない。でもね、出版社を立ち上げるというのは、基本的に、楽天的でなければいけないのですよ。
しかしそうこうしている間に、アマゾンの時代がやってくる。
「米国の要求によってはじまった規制緩和によって、大規模小売店舗法の廃止と再販制度の弾力運用、ポイントカードなどの導入も重要な原因として、中小書店の廃業ラッシュが続き、勝ち残ったナショナルチェーンもアマゾンに抜かれ、一部は印刷資本の傘下に入った。そして今、電子書籍が非再販商品とされることで、アマゾンやグーグルが日本を席巻し、出版界は書店、取次店を見殺しにしながら、崩壊への道を転がり落ちていくのだろうか?」
この20年で書籍・雑誌の販売金額は、2兆6000億から1兆3000億に半減し、出版社の数は4400社から3300社になった。
書店もどんどん潰れ、取次もトーハン、日販以外は見る影もない。そしてトーハンと日販も、特に日版は実質、赤字経営で、明日はどうなるかわからない。
つまりこれは、出版界における、敗戦前夜のような状態といっても過言ではない。
そう高須次郎は言うけれど、しかし私は、その先があると思う。