高次脳機能障害の親戚か?――『どもる体』(1)

医学書院の「シリーズ ケアをひらく」の一冊。この企画を推進している白石正明さんとは、「いける本・いけない本」という冊子の、年度代表本を挙げる会で、会ったことがある。場所は出版倶楽部で、忘年会を兼ねていた。
 
そのとき、どんな話をしたかは忘れてしまったが、感じの好い方だった。

「ケアをひらく」は、シリーズ最初の『ケア学:越境するケアへ』(広井良典)に始まり、『ALS 不動の身体と息する機械』(立岩真也)、『べてるの家の「当事者研究」』(浦河べてるの家)、『逝かない身体:ALS的日常を生きる』(川口有美子)、『リハビリの夜』(熊谷晋一郎)、『驚きの介護民俗学』(六車由美)、『カウンセラーは何を見ているか』(信田さよ子)を、読んだことがある。
 
考えてみれば、一つのシリーズと意識しないで、7冊も読んでいるのは、ちょっと驚きである。
 
もちろんそれぞれ、大宅壮一ノンフィクション賞や、新潮ドキュメント賞、日本医学ジャーナリスト協会賞など、賞を得たものもあって、多分そのころは、仕事に役立てるつもりで、読んでいたに違いない。
 
巻末広告の最初に、「ケアをひらく」全体を貫く方針が、掲げられている。

「本シリーズでは、『科学性』『専門性』『主体性』といったことばだけでは語りきれない地点から《ケア》の世界を探ります。」
 
こんな感覚的なことばで、斬新なシリーズができるとは、本当に驚いた。
 
これでたとえば、『死と身体:コミュニケーションの磁場』(内田樹)、『こんなとき私はどうしてきたか』(中井久夫)、『中動態の世界:意志と責任の考古学』(國分功一郎)の各著者と、執筆交渉しているところを、ぜひ見てみたい。
 
医学書院という、外側からは堅牢剛直に見える版元を、口説き落とすには、かなりの手練手管が必要であったはずだが、その辺はどうなのか、これもぜひ聞いてみたいものである。
 
それで、最新刊の伊藤亜紗の『どもる体』だが、これは私の高次脳機能障害と、関連があるかと思って読んでみた。
 
結論を言うと、必ずしも高次脳機能障害について、何かが分かるということはなかったが、しかしこれはこれで、実に興味深い本であった。
 
しかし本文を読む前に、本として、イラストも含めて、ショッキングピンクと墨の二色刷りで仕上げたところや、口からもう一人の自分が出ていくところを、イラストにした装幀のセンスは、本当に見事なものである。
posted by 中嶋 廣 at 17:57Comment(0)日記