治療法はあるか――『イップス―魔病を乗り越えたアスリートたち―』(1)

著者の澤宮優はノンフィクションライター。イップスとは、何かのきっかけで、腕が思うように動かなくなる奇病だ。
 
というと、野球ファンはすぐに、藤浪晋太郎投手を思い浮かべるだろう。イップスが原因で、途中まではよくても、一試合を通じて、制球が安定することはない。五回くらいになると、とんでもないボールが飛んでくる。
 
ただし藤浪投手は、正式にイップスであるとは、言っていない。
 
ゴルフでは、去年引退した宮里藍が有名である。宮里はイップスのために、パットが入らなくて苦しんだという。
 
この本が出た後のことだが、今シーズンが始まって、大リーグでは、ダルビッシュ有投手が、明らかにおかしい。だいたい五回前後で、制球が定まらなくなっている。彼もまた、イップスではないか。
 
しかしダルビッシュ投手の場合も、イップスであると表明したわけではない。
 
この本では、ほとんどの選手が、イップスであることを隠す中で、三人の元プロ野球選手と、二人のプロゴルファーが、自らの体験を率直に語っている。そうしないと、決定的な治療法がなく、人生を棒に振る選手が、今もかなりいるからだ。
 
三人の元プロ野球選手は、岩本勉(日本ハムファイターズ、投手)、土橋勝征(ヤクルトスワローズ、内野手)、森本稀哲(日本ハムファイターズ、外野手)。
 
二人のプロゴルファーは佐藤信人と横田真一だが、プロゴルファーの方は、どんな戦績があるのか、僕には全く不明である。
 
最初に、岩本勉のインタビューで、ショッキングな爆弾発言がある。それは「この悩みを持っているプロ野球選手は半分はいるのではないか」、というものである。
 
症状の軽い重いはあっても、ブロ野球選手の半分はいるというのは、衝撃である。
 
イップスの特徴は、緩い球をコントロールよく投げることができない、ということである。投手であれば、ピッチャーゴロを捌くとき、一塁手に正確に、緩いボールを投げられない。
 
そういえば、ビッチャーゴロを捕ったら、一塁近くまで走って、下からトスをするように投げている者も多い。ははーん、あれはイップスをごまかすためだったのか。
posted by 中嶋 廣 at 18:29Comment(0)日記