圧倒的だ・・・でも――『騎士団長殺し――第2部 遷ろうメタファー編』(2)

この地下につづく土地には、「メタファー」が住んでいる。
「顔なが」と「私」の会話。

「『おまえはいったい何ものなのだ? やはりイデアの一種なのか?』
『いいえ、わたくしどもはイデアなぞではありません。ただのメタファーであります』
『メタファー?』
『そうです。ただのつつましい暗喩であります。ものとものとをつなげるだけのものであります。ですからなんとか許しておくれ』」
 
ここから、クライマックスは最高潮に達する。「ただのつつましい暗喩」が喋るなんて。しかも変な言葉で、「ですからなんとか許しておくれ」というような言葉を使って、会話するなんて。
 
ちなみに「私」は、メタファーの住む地下に、「秋川まりえ」を探すために、後戻りのできない冒険に出かけているのだ。
 
この地下王国をさまよう「私」の叙述は、本当に見事なものだ。ここからの描写は、叙景ではない。それなら心象風景? いいや、違う。すべては、言ってみれば、メタファーなのだ。
 
ここに、プロローグに登場した、〈顔のない男〉が出てくる。
また『騎士団長殺し』の絵から抜け出した、身長六〇センチほどのドンナ・アンナが出てくる。
そうかと思えば、十二歳で死んだ、「私」の妹の「コミ」も出てくる。

そうして伊豆の老人ホームから始まった、地下の世界の旅は、ついに山中の屋敷の裏手にある、秘密の穴で大団円を迎える。

このとき、「秋川まりえ」は、「免色」の屋敷に忍び込み、隙をついて必死で出てきたのだ。

こうして「私」と「秋川まりえ」は、無事に、ではないけれど、再開を果たす。お互いが、自分の冒険を話すところは、なんというか、心が温かくなる。

クライマックスがあって、大団円を迎えるところは、連綿と続く最高峰の古典文学が描くのと、共通の世界だ。

でも、すべてを読み終わってみると、どうしても腑に落ちないところが残る。