パロディ、パロデイ――『もう一度 倫敦巴里』(3)

限りがないから、やめておくといったのに、でも仕方がない。最初は淀川長治で、いつもの名調子。

「トンネルを出ましたねぇ。長いですねぇ。長いトンネルですねぇ。このトンネルは、清水トンネル言いまして、長さは九千七百メートルもあるんですよ。長いですねぇ。この長いトンネルを出ますと、もう雪国ですねぇ。寒いですねぇ。・・・・・・娘さんが窓をあけて『駅長さあん』言いますね、あそこの景色、きれいですねぇ。その写真、もう一回見せて下さい。ハイ、写真出ました。きれいですねぇ。撮影がいいですねぇ。カメラマンは、グレッグ・トーランド言いまして、アカデミー賞を三回もとっております。上手ですねぇ。ハイ、写真ありがとうございました。」
 
つぎは、つげ義春。とはいっても、1ページに、3コマの漫画があるだけ。題は「『ねじ式』式」。例の「わたし」の乗っている汽車が、迫ってくるところだ。1コマに、それぞれフキダシが1つある。

「(ゴトン ゴトン)国境の/トンネルを/抜けると」
「見たまえ/雪が降って/いるでは/ないか」
「雪国から/逃げてきたのに/また雪国に/もどっている/ではないか」
 
・・・・・・天才としか言いようがない。
 
最後は宇能鴻一郎。

「トンネルを抜けたら雪国だったんです。国境のトンネル、とっても長かった。
 夜の底、まっ白みたい。そう思ってたら、信号所に汽車がとまったんです。
 あたし、エロチックな気持になってしまった。これは内緒なんだけど、トンネルを通るたんびに感じちゃうみたい。
 トンネルがいけないんです。
 トンネルに汽車が入ると、あたし、いけないことを連想しちゃうんです。ああ、あたしにも逞しい汽車が入ってきて欲しい、なんて思ったりして・・・・・・」
 
ほかにも「007贋作漫画集」、「ビートルズ・ギャラリー」、「初夢ロードショー」、「漫画オールスターパレード」、「はめ絵映画館」など、じつに盛り沢山である。

面白いと同時に、それ以上に、懐かしい気分に浸りきった。

(『もう一度 倫敦巴里』和田誠、ナナロク社、2017年1月25日初刷)