パロディ、パロデイ――『もう一度 倫敦巴里』(2)

「兎と亀」はよほど気にいったのか、なんと11年後に続編を作っている。そのときの映画監督は、黒沢明、クロード・ルルーシュ、サム・ペキンパー、ヴィンセント・ミネリ、山田洋次、ジョン・ギラーミン、ジュリアン・デュヴィヴィエ、深作欣二、ウォルト・ディズニー、セシル・B・デミル、フェデリコ・フェリーニである。
ここでは、深作欣二の「兎と亀」を、一部抜粋してみる。

「穴熊(金子信雄)「ご苦労じゃったのう」
亀「兎は?」
穴熊「あいつはお前のおらんうちにのさばりよって、わしの跡目を狙うとるんじゃ。やってくれんかのう。」
兎の家。
亀「お前をやれと言われてきた」
兎「おやっさんはもう終りじゃ。それよりお前と俺で、勝った方が跡目継ごうや」
亀「殺し合うんか?」
兎「競走じゃ。山のふもとまで早う行った方が勝ちや。受けてつかあさい」
スタートラインに兎と亀。スターター(渡瀬恒彦)の合図で走り出す。」

配役はもちろん、言わずと知れた、菅原文太(亀)と松方弘樹(兎)。
 
しかしなんですねえ、パロディというのは、具体的に作品を引いてこないと、面白さが分からないから、どうしようもないですね。この調子で引いていくと限りがないから、もうやめにしよう。
 
全編の中で、いちばん多く出てくるのは、川端康成の『雪国』のパロディである。「雪国・またはノーベル賞をもらいましょう」と題して、庄司薫・野坂昭如・植草甚一・星新一・淀川長治・伊丹十三の各氏が、『雪国』冒頭の一節を、それふうに披露する。もちろん全部、似顔絵つき。これは70年2月号の『話の特集』である。

「雪国ショー」(72年11月号)では、笹沢左保・永六輔・大藪春彦・五木寛之・井上ひさし・長新太・山口瞳を真似る

「新・雪国」(73年12月号)では、北杜夫・落合恵子・池波正太郎・大江健三郎・土屋耕一・つげ義春・筒井康隆。
 
75年2月号では「又・雪国」と題し、川上宗薫・田辺聖子・東海林さだお・殿山泰司・大橋歩・半村良の各氏。
 
77年2月号の「お楽しみは雪国だ」では、司馬遼太郎・村上龍・つかこうへい・横溝正史・浅井慎平・宇能鴻一郎・谷川俊太郎。
 
そうして、復刊のために付け加えた「『雪国』・海外篇」では、シェイクスピア(小田島雄志訳)・サリンジャー(野崎孝訳)・ジャン=ポール・サルトル(白井浩司訳)・レイモンド・チャンドラー(清水俊二訳)。それぞれ、原文を真似た訳者という、二重の複雑なパロディである。
 
さらにそれに追加して、村上春樹・俵万智・蓮實重彦・椎名誠・吉本ばなな・丸谷才一・井上陽水が加わる。
 
というふうに名前を挙げてくれば、これを全部パロディにするのは、ほとんど天才か狂人だね。
しかし、和田誠が、どんなふうな天才、または狂人であるかを示せと言われても、ブツがないと、どうしようもない。というわけで、懲りずに2,3本、ほんの抜粋を挙げておく。